臨時休業を余儀なくされてた飲食店にも、明かりが灯り始めましたね。
この日は、念願のレストランへ。
「HAKKEI Restaurant」 @神戸・三宮
兵庫のテロワールを皿の中で、
さらにはお酒とのペアリングにて楽しませてくれる、注目のレストラン。
確かに。兵庫県って、瀬戸内海から日本海まで広い。
但馬、丹波、播磨、摂津、淡路。
獲れる魚介や育つ食材も違えば、食文化も様々。
HPには「皿の上で兵庫を旅する -Travel in Hyogo on a plate-」の文字。
いいキャッチコピーじゃないか。
舞台ともいえる、カウンター前のキッチンをアグレッシブに動き回るのが、
料理人であり菓子職人の「ウエヤマチイ」さん。
垂水の名パティスリーで菓子職人としてキャリアをスタートさせ、
京都「祇園 大渡」大渡さんのところで和の真髄を学び
「祇園 呂色」小霜シェフのもとで、フランス料理の技を会得。
異色のキャリアをもつ。
料理はコースのみ。
西脇市で栽培してる「ホーリーバジル」のお茶が供される。
ふくよかな甘み、清らかな香り。なんかカラダが浄化される感覚。
まずはシャンパーニュを。
「EGLY-OURIET BRUT Grand Cru」
ペアリングをと意気込んでいたのだが、食後に別件があり…。
グラスであれこれいただくことに。
結局、ペアリングでよかったやん、て酒量になったけど(笑)
▶︎ -朝倉トマトカプレーゼ- 唐墨、和ハーブ、赤酢
モナカの上には、味噌漬けにした「弓削牧場」フロマージュ・サレに、
赤酢でマリネした朝倉フルーツトマト。
清新な味わいと、ほのかな味噌の風味がいいバランス。
カタバミや三ツ葉、クコの実のコンポート、青ゆずの香りがスーッと響く。
▶︎ -フォアグラテリーヌ- 白味噌、分葱、シナモン
仏・ヴァンデ産のフォアグラは、生醤油(きじょうゆ)でマリネ。
洋の油分と和のコクが重なり合う、独特のニュアンス。
日向夏、分葱はぬた和えに。
シナモン・チュイルは食感楽しく甘やかな香り。
お次の酒は、明石・西海酒造の「空の鶴」を。
ワイン酵母を使った純米生酒だ。
甘めの白ワインに通ずる、芳しさとまったとしたコクが
フォアグラの皿に合うねー。キレの良い後味も印象的でした。
▶︎ -丹波鹿 たたき- 蕨、原木椎茸、松ぼっくり
低温でゆっくり熱を入れ、燻したオス鹿のロース肉。
すっきり、美しい酸が広がる。
自家製・松ボックリ ビネガーで和えたリンゴや
大根おろし、梅の風味をつけたフリーズドライ原木椎茸などと共に。
オーストラリア「Moric HausMarke 2015」をグラスで。
エレガント。穏やかな果実味がすっと広がった。
続いて椀物が登場。
▶︎ -淡路島猪豚 豚汁- 淡路玉葱、金時草、菊花
イノブタと淡路玉葱からなる、しんじょう。
複雑味があり、なんてクリアな余韻なんだ。
味噌をコンソメの技法でひいた、ダシの透き通ったうま味と共鳴。
猪豚の椀物には、長期熟成酒「龍力 J・SALIQ」を。(姫路・本田商店)
日本酒をシェリー樽で熟成させたという、その個性、好きやなー。
猪豚の澄み切った味わいに、酒のエキゾティックな熟成香、気持ちいいね。
丹波「ヒヨリ・ブロート」のパン、心に深くしみ入る美味しさ。
バターと見せかけて、絹ごし豆腐のスプレッドってのが面白い。
▶︎ -室津帆立 ミキュイ- 稲美アスパラ、落花生豆腐、土佐酢
帆立、まったりとした甘みが堪らん。
白アスパラと昆布からなるジェル(ジュレではなくジェル)の
透明感あるうま味、そして落花生豆腐の香ばしさ。
それぞれがクッキリ主張しつつ、主役を引き立ててる。
ホタテには、ギリシャ・サントリーニ島の白を。
初めましてな、アシルティコというブドウ品種がよく合う。
ピシッと決まったペアリングが心地よく、
BGMに流れるは、キース・ジャレットの
透明感あり変幻自在なピアノの調べ。この空間にきまってるねー。
▶︎ -播州穴子 八幡巻- 文旦、葉山葵、奈良漬
煮ゴボウに穴子、オカヒジキを巻き、ベーニェに。
ベーニェとは“ベニエ”とも呼ばれてる、
天ぷらのような衣をつけたフランスの揚げ物。
和とフレンチの技に、兵庫の文化をクロスさせたオリジナリティが光る。
生地にビールとか使ってるのか、サクッザクッと軽やかな食感。
ファッと穴子が踊り、ゴボウが香る。
葉ワサビのピュレ、文旦のあん、奈良漬け、で味の変化が楽しかった。
▶︎ -明石真蛸 蛸飯- 山田錦、朝倉山椒、蛸節
この料理も、しみじみ旨かった。
酒米・山田錦で蛸飯、という発想。ちょっと芯を残した米は
咀嚼するほどに、真蛸のふくよかな旨みが増す。
▶︎ -津居山 グジ 炭火焼- シルク茄子、醪、大徳寺納豆
この鱗の立ち方見てるだけで、テンション上がるわ。
身はぷりっぷり。スッとキレイな脂とともに、凝縮感ある旨みが広がる。
シルク茄子の揚げ浸しは夏の香りを放ち、
醪のピュレや大徳寺納豆、いいアクセント。
▶︎ -ジャパニーズレモネード-
淡路マイヤーレモン、丹波深山紫蘇、千種川源水
「お水餅です」とシェフ。
千種川源水の透明感。レモンのソルベ、紫蘇の甘酸っぱさが
和音を奏でるのだ。
ロンドン・パンクと生まれ持っての知性、
そしてセンスが融合したかのような
「ウエヤマチイ」さんの風貌とオーラもそうだけど、
どの皿もそう。潔くてカッコよくて、ここにしかないインパクトがある。
「2010 Guyot Olivier Clos de la Roche Grand Cru」
▶︎ -田村牧場 但馬牛サーロイン すき焼き- 榎茸、白菜、木の芽
割り下に浸け3日、真空して寝かせたサーロイン。
確かにすき焼きのニュアンスを感じつつ、
田村さんのサーロインの力強さにハッとした。
歯切れよく、迸る脂はまったりと深い甘み。
榎茸のピュレ、山椒オイルでコンフィにした卵黄、山椒佃煮で味変を楽しみ。
白菜漬物の酸・辛味が、全体をキュッと引き締めてくれた。
▶︎ -丹波黒豆 豆煮- 花岡苺、塩麹、八角
デセールも艶やか、かつ潔すぎる。
丹波黒豆の質朴な甘みに続き、塩麹クリームのコク、
姫路・花岡苺のコンポートの甘酸っぱい香り。
スダチのグラニテのすっきり感と、
八角のクランブルの食感がアクセントを添える。
小菓子と、宍粟郡のカキドオシ茶でクールダウン。
鮎には丹波産ブルーベリーのコンポートと
ココナッツ風味のクリームチーズ。
ショコラは、バローナのチョコ。その中には安納芋きんとん。
エキサイティングな2時間半でした。
ジャンルはイノベーティブ、新しい日本料理とも捉えられるだろうか。
いや、ここにしかない独自の世界。
和魂洋才、起伏に富んだコース料理の数々に
ウエヤマチイさんの、
兵庫への、ものづくりに命を懸ける地元の皆さんへの
オマージュと愛を感じるのでした。
平田さん、皆さん、そしてウエヤマさん、スタッフの皆さん
ありがとうございました。
「HAKKEI Restaurant」
兵庫県神戸市中央区加納町4-8-17
078-515-6522(問合せ専用)
open :12:00〜、17:30〜・20:30〜
close:不定休
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