W・小林さんの、食と音楽のセッションを体感するべく
石巻・牡鹿半島へやってきた。
様々なジャンルのアーティストが、石巻、そして牡鹿半島の歴史や文化、
豊かな自然を舞台に、地元の人々とつくり上げる、芸術・食・音楽の総合祭
セッションダイニング#4
小林寛司「Villa AiDA」× 音楽家 小林武史〈食と音楽のケミストリー〉
会場「リボーンアート・ダイニング」へと向かう、海沿いの砂利道を進みゆけば
スピーカーから聞こえてくるのは、自然界の声や、スペーシアな電子サウンド
さらに耳をすませると、打ち寄せる波の音や小鳥の声がリフレイン。
自然界の音も取り入れた、小林武史さんによる「音」のインスタレーションだ。
ワクワク。
ナッツやドライフルーツが入った小袋をいただく。その中には
「深呼吸。耳をすませて 森の妖精より」というメッセージカード。
ポリポリ、つまみながら歩いていると…。
「朴葉の実のお茶です」とスタッフより。
カラカラの喉に、染み入りました。
さらに、「音」のインスタレーションは続く。
「あの坂をのぼれば」的、ワクワク感が止まんないぞ。
牡鹿半島の浜辺に佇む「White Deer(Oshika)」が見えてきた。
(名和晃平 / KOHEI NAWA)
ボルテージは最高潮。
開場時間の16:00ジャストに到着・・・。
この日は
昼に大阪で用事を済ませて、伊丹発のフライトにギリ間に合い
仙台空港から車でこの地へ。
「なんとか間に合った…」。安堵でボーッとしていた頭を切り替え
小林寛司シェフ、小林武史さんならではの一期一会に、
どっぷり浸からせていただくことに。
ステージには、小林武史さん、さらには
チェリスト・四家卯大(SHIKA UDAI)さんのお姿も。
12皿のフルコース一品一品に合わせた、2時間にもおよぶ演奏のはじまりです。
この音源を伝えられないのが、もどかしいけれど、記憶の奥底に留めておきます。
セッションダイニング#4〈食と音楽のケミストリー〉
〜Proposal Corse by Kanji Kobayashi〜
*プロローグ
「メヒカリのフリット」
セモリナ粉をまぶしたメヒカリは、ざくっと軽やか、ふわっとエアリー。
そして儚く消えた。
これは夢か幻か…。
小林さんの演奏に耳を澄ませるほどに、
現実なのかそうじゃないのか不思議な気持ちに。
そして、自然の中で生かされている自分自身の、感覚が研ぎ澄まされてゆく。
*想う
ジャガイモのピュレとサワークリームに、アンチョビを忍ばせて。
ミョウガの食感よく、ヨーグルト・チップスの爽やかさが響く。
*酵母
「鹿のリエットのホットサンド」
程よく野生味を感じ、しみじみ味わい深い。
*緑海
モロヘイヤとサツマイモ、鯖のタルト。
この地域らしい風土を感じさせる磯のニュアンスに
サツマイモの優しい甘みが呼応する。
小林さんによる、清らかな響きと
四家さんが奏でるチェロの低音域、その美しき出会いに耳を澄ませて。
*晩夏
ゴーヤやオクラ、キクラゲ、シシトウガラシ。
苦み、甘み、鮮やかな食感…。素材らしさが際立っていた。
この辺りで四家さんのソロ。
チェロの豊かで温もりのある響きが、夏の終わりを告げてくれた。
*初秋
南瓜、エイの肝、チコリのクリームとコーヒー、
干瓢と玉ネギのチップスと共に。
余韻に広がるのは海の香り。
小林さんによるピアノ・ソロの音色に、
秋の虫の声、海風の香り…いまここに存在する
自然界の全てが心地よくハーモナイズ。
*温もり
「魚介のスープに、秋刀魚のつみれと海藻と」
すごいなー。小林シェフのセンス。スープを口に含むほどに、
リアス式のくねくねした、漁村の風景が脳裏をよぎる。
そして仄かに利かせた唐辛子の辛みに、体がじんわりあたたかく。
*炙り
「タコの炙り、マイクロキュウリやピーマンを、昆布の出汁の泡、ハーブとともに」
鮮烈、爽やか、清らか…あらゆる香りと、海の旨みが調和。
*約束
「鹿もも肉のロースト 小豆と揚げ茄子、小芋のペースト」
鹿肉の噛みしめる旨み、小豆の質朴な風味、赤ワインソースのコク。
この組合せの発想はどこから?と驚きながらも、
スーッと体に馴染む優しさ。
*静海
「近海のサワラに オイスターソースで味付けした玄米 ツルムラサキ」
サワラはふっくら、繊細。地の素材が心地よく共鳴。
コース料理に合わせて、小林武史さんによるオリジナル曲、次々と。
おっ、聴き慣れたあの曲も、この曲も…。この場に揺らぐ風と共に。
*実蜜
栗とほおずき、米のミルク煮。
「エピローグ」は、ドライフルーツの小菓子。
最後は、スピーカーから流れるピアノの音色と共に
パチパチと爆ぜる薪火の音…。
そこに自然界の音が重なり合う。
アートと音楽と食とがクロスオーバーする、初めての経験。
本当に、石巻へ来てよかった。
小林寛司シェフ、小林武史さん、そしてスタッフの皆さん
素晴らしいひとときをありがとうございました。
さて。
その後は、夜の石巻へ。
主役のおふたり、主要メンバーと一緒に、飲んで飲んで語り合い…。
学びの多い、濃すぎる時間をいつもありがとうございます!
翌日は「リボーンアート・パスポート」を手に、作品鑑賞。この様子は追ってまた。
さて今週末、世の中は3連休!
ゲスト・シェフには、芦屋「メツゲライクスダ」楠田裕彦シェフが登場しますよ!
【Reborn-Art Festival 2021-22】