「perus」
フィンランド語で『素』という意味をもつ
カウンター9席だけの特等席。
物語のあるレストランだ。
半径0kmの食卓、サステナブル、ローカル、地の素材、四季、命のてざわり…
「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」の集大成ともいえる。
創る暮らしを体感するvilla「cocoon」と
キッチンラウンジ「takka」と同時オープン。(2022/11)
シェフ・山名新貴さんの、地元・素材・生産者への敬意に満ち溢れた
クリエイティブと向き合う夜。
大きな窓の向こうの植栽は「
SOLSO」によるデザイン。
あたかもこの場所に昔から存在していたかのような存在感を放つ。
設計・内装は「
ikken」、そして店内のBGMは小林武史さん。
ライヴ開演前のあの胸の高鳴り…を、彷彿とさせる。
まずは、山名シェフのプロフィールを紹介しよう。
大阪の名リストランテ「クイントカント」で
4年半経験を積み、その間にスーシェフも経験。
東京の会員制レストランではシェフを務める。
その後、「KURKKU FIELDS DINING」のシェフを経て「perus」のシェフに。
山名シェフとタッグを組むのが、小高 光さん。
長野・松本「松本十帖(created by 自遊人)」で調理を経験した後、
名酒販店「IMADEYA」で、造り手の想いを伝える伝道師として活躍。
「takka」と「persu」のお酒セレクトと
「perus」でのペアリングを一手に引き受ける。
ふたりのセッションの妙は、想像をはるかに超えていた。
「ソガ・ペール・エ・フィス・ブラン・ド・ブラン 2010」
長野・小布施ワイナリー
熟成による酸のまろやかさ。香ばしさと上品な甘やかさは
高級シャンパーニュに匹敵する味わい。のっけから、驚いたー。
「本日のスープ」
今日のコース料理に用いる、オーガニック野菜の
皮や根っこから作ったサステナブル・スープ。
素朴な甘み、ほんのり酸味…澄みきった優しい味わいに心が洗われる。
目の前には珠玉の……
■白い宝石
水牛モッツァレラ / トマト / バジル
水牛乳チーズ職人・竹島英俊さんがつくる「水牛モッツァレラ」は、
圧倒的な鮮度の良さ。
心地よい弾力に続き、水牛ミルクの清々しく甘い香りに包まれる。
トマトの旨みを抽出したスープ、バジルオイルと共に味わえば
口の中にはカプレーゼというニュアンス。
■西の明石・東の大原
蛸 / 小麦 / ハリッサ
タコとジャガイモのガリシア風を、関西風に再構築してくれた。笑
風貌はたこやきながら、タコのラグーの凝縮感、ハリッサの辛みがナイス!
タコは千葉・大原産。明石タコと並んで日本の2大タコと呼ばれている。
なるほど!
「とおの 権化 どぶろく」岩手・とおの屋 要
キュッと感じる強い酸味、アプリコットのような果実味、
ヨーグルトのようなミルキーな酸が、全体をまろやかに。
タコラグーやハリッサの個性と共鳴。ペアリングに唸るわ〜。
■プリミティブ
山羊 / レタス

小高さんから手渡し。
「KURKKU FIELDS」で摘んだ有機レタスの中には
薪の熾火でローストした山羊、リンゴのコンポート。
山羊はキメ細やかでミルキーな味わい。ほんのりとスモーキーな香りが広がる。
味の濃いレタス、大地の恵みと向き合う悦び。
「サノバスミス ロジック」は、長野産リンゴを用いたホップサイダー。
ホップの渋みと、リンゴの爽やかな風味を感じながらも、
シードルとは一線を画す味。リンゴのコンポートがいい仲人になっていた。
■リボリータ
トスカーナ州の冬味「リボリータ」とは嬉しい。
現地では、白インゲン豆を用いるところ、山名シェフは
千葉・君津市に伝わる大豆の在来種「小糸在来(こいとざいらい)」を使用。
自家栽培するこのお豆さんが、すこぶるふくよかな味わいなの。
ファームで栽培する有機野菜の優しさも重なり合う、まさに命のスープ。
「風の森 ALPHA 8」奈良・油長酒造
全量玄米による醸造。玄米の穀物感、菩提酛による軽やかな酸が堪らん。
小糸在来の個性、ほのかに利かせた山椒の風味のハーモニー。
この地でしか味わえないリボリータに昇華させていた。
しかも山名シェフの愛、ゲストへの想いを感じる一品でした。
目の前には、エミリア・ロマーニャの伝統「ラビオローネ」が。
■優しさに包まれたなら
平飼い卵 / 小麦 / ペコリーノ
特大のラビオリは、「KURKKU FIELDS」の平飼い卵(卵黄)入り。
親鳥のボーンブロスをベースにしたソース、セージバターソースと共に。
弾力のあるラビオリの包容力ったら!卵黄のコクとまろやかさを包み込む。
コクのあるチーズ、ソースの深み、全てが融合した
優しくも奥深い味わい、そして香りが、口中いっぱいに広がる。
ファームに自生するハコベにも、馳走の心を感じます。
「勝沼醸造 アルガブランカ イセハラ 2021」
やや高めの温度帯が素晴らしい。
桃のような香りが、ソースのふくよかな香りにピタリ。
農園の有機ニンジンと、もものすけ(赤カブ)は、
松の葉とローズマリーでスモークしたらしい。
そして鮮やかな色彩の一皿へと。
■農場の豊かさ
有機野菜
プチヴェールやスティックセニョール、ニンジン、赤カブと
そのパウダーとともに。香りも味わいもくっきり。
まさに、「KURKKU FIELDS」ならではの大地の滋味。
「平川ワイナリー サンパ ロゼ 2019」余市・平川ワイナリー
IMADEYA限定ワイン。さすが小高さんセレクト。
さっぱりとしつつも、チャーミングな果実味と香りが、
赤カブの瑞々しさ、ニンジンのジューシーな甘みと共鳴するのです。
お口直しに柚子大根、新漬けオリーブ、大根糠漬を。
■竹筒のアクアパッツァ
鮮魚 / 蛤 / 原木椎茸
山名シェフの手にかかると、アクアパッツァもこうなる。
地元・富津揚がりのサワラを2種の味で。
皮目を炙ったサワラは、脂のり良き色白。
アクアパッツァの身はふわっサクッ。九十九里浜の蛤、原木椎茸の旨みと共に。
「満寿泉 シェーヌダルゴンヌ 2019」富山・桝田酒造店
言わずと知れた名作。HENRI GIRAUDのオーク樽で熟成させた純米大吟醸。
感動のため息、連続やん。
■山の恵み
猪 / 春菊
猪は「KURKKU FIELDS」の近隣で捕獲。
連携する食肉処理場「オーガニック ブリッジ」で解体、加工、精肉に。
その仕留め方も、解体処理も完璧なんだろう。
さっと湯にくぐらせた肉は、清々しい風味。
猪の骨メインに、親鳥の骨もブレンドしたボーン・ブロス。
そこに卵黄加えたすき焼き風。うまいわぁ〜沁み渡る。
ここで、「鳥居平今村 キュヴェ・ユカ 2004」という至福。
リリースは2022(勝沼・鳥居平今村)
エピソードがとてつもなく深い、稀少な一本を感謝です。
山名シェフが目の前でパスタを伸ばしはじめた…。
現在、小麦は『イマフン』今村さんによるオリジナルブレンド。
味わうほどに、見るほどにお腹が空いてくる。久しぶりこの感覚。
■手打ちパスタ
小麦 / 柚子胡椒
噛むほどに、小麦の質朴な味わいがぐんぐん押し寄せる。
味の要は、水牛のチーズを作る際にでるホエーと、バター、醤油、富津の海苔。
雪だるまの海苔の脇に忍ばせた、柚子胡椒で味変。
これは日本人のDNAに響くパスタというか。
そこに小高さんがバシッと合わせてきた酒が…。
伏見の地で新たなる酒造りを始めた、松本日出彦氏率いる日々醸造。
「日日 秋津山田錦」でした。
軽快なタッチ。身体にスーッと馴染む繊細さ、その長い余韻に浸る幸せったら…。
この地ならではのテロワールを感じるパスタと、スッと自然に手を紡いでいた。
食べ続け、飲み続けていたかった。
松本ヒデさんにすぐさま感動メッセージ入れた。笑
■チーズ3種
左から、水牛のゴーダ・水牛ブルー・シェーブル。
チーズは全て自家製。この豊かな地に、敬意の念。
「木戸泉 アフス オールドリザーブ」千葉・いずみ市・木戸泉酒造
熟成期間45年以上という梅酒。
芳醇なんて言葉じゃ表現できない、複雑な奥深さ。
■紅白
ラ・フランス / 水牛リコッタ / すいば / 胡瓜
赤ワインに漬けたスイバ、白ワイン・コンポートの洋梨…
水牛リコッタの清らかな味わいにて、気持ちよくクールダウン。
「ブラウンスイスのキャラメルジェラート」や
お茶菓子「フィナンシェ」を味わいながら
まだ、いただきます。ご馳走様です。笑
「CLAXTON`S EXCLUSIVES WILLIAMSON 2015 7YO RED WINE CASK」
窓越しの庭に、舞い散る粉雪…。
話が尽きない皆さんとの、明けてしまうのが惜しい夜でした。
「ファームの食材 そして地食材の魅力を 生産者さんの想いと共に
クリエイティブに できる限りわかりやすく表現したい」
生産現場の近くで食に携わってきた、山名シェフならではのクリエーション。
一皿一皿から溢れ出る熱量に、心を揺さぶられっぱなし。
そして食べ進めるほどに、感覚は研ぎ澄まされ、身体が喜んでいた。
次のスケジュールを決めて、お店を後にしたのでした。
『perus』フィンランド語で『素』という意味。
山名シェフの料理を味わった、
「cocoon」総合ディレクターの皆川明さんが命名したという。
「perus」
*昼は宿泊者以外の方も気軽にシェフの料理を、
*夜は宿泊者限定のコース料理を堪能することができるそうです
「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」