ご存知の方も多いと思うが、日本初のフードインキュベーション施設であり、
食でチャレンジしたい人を支援する場でもある。
おいしいく学びの多い食イベントもしょっちゅう開かれているこの場所。
先日、シェフとともに考えるフードロス解決に向けたイベントが開かれ、伺いました。
■HAJIKKO RESTAURANT(はじっこレストラン)
今回は「HAJIKKO RESTAURANT」キックオフイベントとして実施する位置づけだそう。
趣旨に賛同するシェフとバーテンダーがそれぞれ“はじっこ”をテーマにメニューを考案。
何やら学びが多そうで、個人的にも興味津々!
まずはチャレンジングなシェフ・ソムリエたちを紹介させていただこう。
右は
南森町にあるフレンチ・イノベーティブ
食材の端っこが、奇才シェフの手にかかるとどう変貌を遂げるのか、楽しみ!
左の、島村友多シェフは2022年2月、
中崎町にフードロス専門料理店「
Hi, KI(ハイキ)」を開業。
今は、フードロスの中でも、鯛のアラに着目。
「Hi, KI」では、鯛の骨でスープをとる、鯛だし100%のラーメンを味わうことができる。
盛り付けをしているシェフは
靱本町にある日本料理「
靱本町がく」の今川 岳さん。
さすが、法善寺横丁『浪速割烹 㐂川(きがわ)』に入り約10年、経験を積まれだけあり
「始末の心」に育まれた大阪ならではの料理を、和魂洋才の技をもち提供。
ラストは海外経験も豊富なバーテンダー・
古瀬則彦さん。
京都、台湾、シンガポールのバーでキャリアを積み、
現在は、北新地にあるホテル「Zentis OSAKA」2Fにある
その端っこ食材には、大阪府産農水産物「大阪産(もん)」の
・菊菜
・枝豆
・ぶどう も活用するという。
フードマイレージもきっちり、考えられているのがいいね。
名シェフと名バーテンダーたちの「端っこ」をテーマにしたクリエーションは、
おいしさも相まって唸りっぱなしだった。
そのメニューをご紹介。
■エイのエスカベッシュ(「La Kanro」仲嶺シェフ)
エイをフリットにして、カレー味とバジルトマト風味のエスカベッシュに。
その身は、見た目からは想像のできない上品な味わい。
菊菜や玉ネギ、ニンジンの風味もいいね。
仲嶺シェフ曰く「エイは、海の害魚と言われています」と。
養殖のアサリを食べたり、漁の網に絡まりダメージを与えたり。
獲れたとしても買い手がつかず、捨てられることも多いらしい。
仲嶺シェフは、エイがもつ白身魚のような淡泊な味わいを生かし切っていた。
■大阪産(もん)を使った3種のチョコレート(菊菜・枝豆・デラウェア)
(「La Kanro」仲嶺シェフ)
(右から時計回りに)
「枝豆」
枝豆はピュレにして豆乳と共に撹拌。
さらに、90℃で1時間半かけ、水分を蒸発させながらミキシングして
豆乳に枝豆の香りを移したそう。そのガナッシュをホワイトチョコでコーティング。
枝豆の質朴な香りと甘みが生きていた。
「菊菜」
ピュレにしてホワイトチョコレートに練り込んだそう。
菊菜のほろ苦さを生かした見事な仕上がり!
「デラウェア」
「セミ・セミドライ」の状態に乾燥させ、カカオ(55%)を加えてミキシング。
あえて半生っぽく仕上げたデラウェアは、噛むほどに広がる甘酸っぱさが印象的でした。
フレンチの料理人が創造する端っこ食材を用いたショコラ、というイノベーション。
料理を味わっているような、香りの広がりや立体的な味わい、流石の一言です。
お次は、「靱本町がく」の今川 岳さんによる2品!
■枝豆
「枝豆の全てを使いました」と今川さん。
枝豆の枝は、オーブンで乾燥させた後にゆがき、枝豆の「枝の汁」に。
その汁で、枝豆をゆがいたそう。
枝とサヤからとっただしは、昆布を入れて煮出し、鰹節を合わせただしに。
塩、薄口醤油を入れて味を調え、冷製の薄葛仕立てに。
仕上げにサヤの粉末を回しかけている。
枝豆そのものに味付けはしていないとのことだが、
ふくよかな甘み、香りが生きていて、枝豆がより枝豆らしい味!という印象でした。
■菊菜 ■ハマチ
今川さん曰く、「通常、菊菜は多めのお湯でゆがき、冷水にとり色止めします。
今回は、あえて少なめの熱湯でゆがき、茹で汁ごと冷やしました」とのこと。
その菊菜は潰したのと刻んだものを2種揃え、生の菊菜と和えている。
塩など味付けを一切していないという潔さ。
ゆがき汁にとろみをつけているから一体感も素晴らしかった!
自家製の菊菜オイルを回しかけたハマチを「菊菜の菊菜和え」と共に。
素材をより素材らしく。という言葉がぴたりとくる、味わい深さがあった。
しかも「始末の心」を常日頃から実践されている、今川さんならではの発想に脱帽。
「Hi, KI(ハイキ)」の島村友多シェフ考案
■鯛白湯ラーメン
鯛アラと香味野菜、水のみを高温で炊き上げた濃厚スープで仕上げた「鯛白湯ラーメン」。
島村シェフによると
「鯛の骨などアラの8割は廃棄さているんです」とのこと。
鯛そのものの風味を強く感じる「頭」、脂の旨みが強い「ハラ」、
雑味が薄い「背」、それぞれを霜降りにした後、
高火力で3〜4時間に出して白湯スープに。
その味わいは、濃厚でいてどこまでも清々しい。
多加水麺の、スープとの程よい絡みも秀逸だった。
しかも、煮出した鯛のほぐし身を、味噌漬けにして焼いたものをトッピングしていて、
食べ進むほどに、味の変化が楽しい一杯に仕上がっていた。
島村シェフ曰く「鯛は、重宝される白身と、
その副産物の需要が釣り合っていないのが課題なんです。
何しろ鮮度がいいので、捨てるなんてもったいない!」って語りは熱かった。
最後は独創性の光るカクテルで締めることにしよう。
「UPSTAIRZ」バーテンダー・古瀬則彦さんによる3品は、
■菊菜のレブヒート
菊菜はドライシェリーと共に60℃で2時間、真空状態で低温調理。
シェリーに菊菜の香りと苦味を閉じ込めたという。
あえて炭酸を合わせることで、菊菜の香りをグッと感じ、
トニックウォーターのコクと苦味が、菊菜のほろ苦さを引き立てていた。
さっぱりとしたテイストで、1杯目に最高でした。
■枝豆のアレキサンダー
枝豆はペーストにすることで、枝豆がもつ旨みを凝縮させつつとろりとした食感に。
その茹で汁には煮出した番茶を加えることで、香ばしさも加わり‥。
ユニークだったのは、茹で汁が持つ「泡立つ」性質(大豆レシチン)を活かし、
卵白の代替品として利用したこと。
その泡の質感は心地よく、枝豆の甘味や香り、
ホワイトカカオのコクが後味に広がる、満足度の高い一杯でした。
「このカクテルは、ビーガンのお客様に向けても
非常にウケが良いと思います」と古瀬さん。またぜひ飲んでみたいです!
■ホールレモンスカッシュ
カクテルに柑橘類を使う場合、果汁だけ、あるいは皮だけ香り付けすることも多い。
そこで古瀬さんは、レモンの種以外全ての部位を用い、
端っこを出さないノンアルコールカクテルに!
果汁の爽やかな酸味、皮、そして身と皮の間の香り…
レモン独特の個性がこの一杯に凝縮していた。
この和気藹々とした感じ、大阪らしくて、めちゃ良かった。
フードロスの観点はもとより、「大阪産(もん)」についても学ぶことができ、
美味しく学びの多い時間でした。
仲嶺さん、島村さん、今川さん、そして古瀬さん、ありがとうございました!
主催者のこんなコメントが印象的だった。
「はじっこ=規格外、食材の端といった狭義に留まらず、
世の中の端っこ、飲食店が声を上げづらい裏事情、等々…、
そこに光を当て、作り手と食べ手が一緒に考えたら、世の中少し良くなるのでは?
そんな発想から発足したのがHAJIKKO RESTAURANT。
取り組みを継続しながら、食でやさしい街・大阪を実現できたらと思っています。」
このイベントを皮切りに、今後も継続的な展開を予定しているそうです。
2025年の「大阪・関西万博」の大阪府市パビリオンでの展開も計画中だとか。
今後も定点観測したいと思います!
主催:大阪商工会議所