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福井・名田庄「日本料理 崇」 若狭の恵み、馳走の心と郷土の味。

地元・小浜で仕事を終え、向かった先は
名田庄「日本料理 崇」
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先月は、取材でお世話になり(公開は近日中)
今月は、食のキーパーソンたちと共に。

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店主の田中俊祐さんは、京都『菊乃井 本店』で10年間、経験を積んだ。
故郷・名田庄に戻り、かつて曽祖母が住んでいた、
築100余年にもなる葛屋の全改装を経て、2023年6月に開業。


5:30pm
峠を越えれば京都・美山というこの里山には
清らかな空気が漂う。

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食前酒は、自家製の梅酒。




*筍豆腐
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地の筍と、低温調理した若狭湾の真蛸、コゴミの塩漬けに
木の芽の香りを生かしたジュレが絡む。

ひんやり清々しく、筍はホクッ甘っ。
心が洗われる、はじまり。




*八寸
 細魚 筍 寿司
 アスパラガス 筍 蕗味噌和え
 筍 木の芽和え
 スナップエンドウ
 イサザ くぎ煮
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端午の節句にちなんだ菖蒲八寸。
「主役は裏山で採ってきた筍です」と田中さん。
筍はほの甘く、澄んだ風味。
包丁の入れ方や調味の違いで様々な表情を見せる。
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そして、懐かしのイサザ!は別名「シロウオ」と呼ばれるハゼ科の魚。
産卵のため南川を遡上する3月に漁解禁。名残の味わいをしみじみ楽しんだ。


瓶ビールに続き、若狭が誇る「早瀬浦」の定番酒
早瀬浦 純米酒を。軽快ながら、芯のある味が五臓六腑に染み渡る。



*椀物
 ぐじ 筍 蕗 水芹
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一番だしと、ぐじの骨からひいただしが重なり合い、旨みは深く。
甘鯛がホロリとほどけ、吸い地はより深みを帯びる。
蕗も水芹も木の芽も、集落の裏山から届く大地の恵み。
小浜漁港揚がりの甘鯛と共に、若狭ならではの情景を描いていた。



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京都「日々醸造」日日 山田錦 を愉しむ至福の時間。




*ナメラ ハリイカ
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ナメラとは小浜漁港で水揚げされた、キジハタの別名。
咀嚼するほどにじわりと旨みが広がる。程よい熟成感がいいね。
ハリイカはシャクッ、甘っ。

ナメラのアラ煮凝り、本山葵、葉山葵塩漬け、ウイキョウ酢漬けと共に。
土佐醤油のほかに、桜の葉の桜塩なども添えられ、丁寧な手仕事を感じさせた。



*マス
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若狭湾の幸、の次は里山の恵み。
このマスは「瓜破の水」で名を馳せる隣町・三方上中郡若狭町より。
湧水のそばにある養魚場で育つ。
口に含めば、鮮度を感じながらも味わいは深い。
新玉ねぎ、赤蕪塩漬け、アスパラガスのピュレ、
田中さんが裏山で摘んできたクレソンの、香りやほろ苦さもいいアクセント。





*ヤマメ塩焼き
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1時間以上かけて、炭火でじっくり焼き上げたヤマメ。
皮はザクッとクリスピーで、身はふっくらホロホロ。
添えている白菜のペーストの柔らかな酸味と旨みで、味の変化も楽しかった。

天ぷらにしたタラの芽は、近所の農家さんが育てたものだし
素揚げにしたノビルは「そこの土手で採ってきました」と田中さん。
どの一品にも、馳走の心を感じるのです。

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*ホタルイカと山菜の小鍋
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こちらも地物オールスターズ。
ぷっくりと肥えたホタルイカに寄り添うのは
塩漬けにしたコシアブラ、ウワバミソウ(ミズ)、
筍、ワラビ、新玉ネギ、木の芽…。
自家製のポン酢&柚子胡椒で、この時期ならではの恵みをじっくり堪能。


山海の春のエキスが滲み出ただしの、さらなる楽しみ。
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「めかぶのにゅうめん」にて
余すところなく味わい尽くすのでした。嗚呼。無言。至福。


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煮えばな、登場。
米は、名田庄で栽培するコシヒカリ・坂本米。
艶やかなな一粒一粒を、噛むたびに幸せが込み上げる。



*鯖なれずし
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若狭地方の郷土食。私に撮っては郷愁の味。
「近所のおばちゃんに作り方を教えてもらいました」という自家製だ。
鯖の身は程よく引き締まっている。
頬張れば、ブルーチーズを思わせる高貴な香りが広がり、
鯖特有の風味は、じつに清々しい。
少しずつ齧りながら、そして飯を舐めながら、日本酒をチビリチビリと。
『山内かぶら保存会』のおばちゃん達が作った、伝統野菜「山内かぶら」のつぼ漬けも
すこぶる杯を進ませるのです。




*猪の角煮
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近くに住む、猟師さんが持ってきた猪肉を八丁味噌や黒糖ベースの角煮に。
そのバラ肉はまったりとコク深く、
素揚げにした菊芋や、春キャベツの葛餡の優しさが見事なバランス。

ここらは「ぼたん鍋」が有名な地。
名田庄ならではの里山の情景を、田中さん流に昇華。
土鍋ご飯とともに最高の〆。




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デザートは
「白岳仙」の酒粕を用いたアイスと苺と黒豆ソース。
そこに、熱々の蓬餅がスッと添えて。
香り高く、温度差楽しく。満足満腹。


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抹茶で〆。


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気がつけば窓の外は暗く、おくどさんを設えた空間美が一層際立つ。


日々表情を変える名田庄、そして若狭地方の
自然の恵みと対話をしながら、味づくりに挑む田中さん。
だからこそ、一皿ごとのエピソードも味わい深い。

素材や生産者への敬意を感じさせる、
衒いのない料理の数々が、食べ手の心をグッと掴むのです。


最高の一日だった。
ご一緒させていただいた皆様、
そして田中さん、ありがとうございました。




「日本料理 崇」
福井県大飯郡おおい町名田庄三重18-51
0770-67-2493
open : 12:00~14:00、17:00~20:00
close: 月曜、不定休
https://su-natasho.jp/
https://www.instagram.com/su_natasho.fukui/


by writer-kaorin | 2024-05-08 12:40 | 日本料理 崇 | Comments(0)  

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