地元・小浜のヘベレケ日記。笑
最近は隔週で小浜ということもあり、
足しげく通う一軒を紹介しよう。
「和旬いわもと」
若狭小浜の地物と、福井の地酒を愉しめる料理屋だ。
この日は、地元の酒蔵「小浜酒造」の銘酒を味わえるということで
ひょいひょいっと出かけて、大正解だった。笑
そもそもなのだが
「小浜酒造」のエピソードは深い。
地元人に馴染みのあった酒蔵「わかさ冨士」が酒造業撤退。
それを受けて事業継承・設立した酒造会社が「小浜酒造」。
創業の地で50年ぶりに日本酒蔵を復活させたのは平成28年のこと。
な・な・なんと……
飲みたかった、だけど稀少で出合うことすらできなかった
純米大吟醸「五芒星」が目の前に。
昨年、ミラノで開かれたイタリア最大規模の日本酒コンテスト
県内で唯一、最高位のプラチナ賞に輝いた一本(ベストデザイン賞も)。
詳しくは後ほど伝えるとして……
「和旬いわもと」は、
基本的には懐石コースのみ(¥11,000〜要予約)。
今回は地元のご常連と、「小浜酒造の酒」を飲む会ということで
あれこれ即興でお作りいただくことに。
ちなみに店主・岩本ヒデさんは「唎酒師」の資格を持つ。
だから「小浜酒造」の酒それぞれの味わいに照準を定め
相性の良い料理を作ってくださった。
◆若狭まはた 若狭イチジク カルパッチョ
小浜で養殖する「若狭まはた」。これうまいの。
脂のりもよく、風味は清々しく、上品な旨みが広がる。
いっぽうで若狭イチジクは、さっぱりしつつも甘味は深い。
ここに合わせるのは「おり酒」。
9月中旬、小浜で開かれる「放生祭(ほうぜまつり)」に向けて、
瓶詰め真っ只中という「上撰わかさ」の「おり酒」だ。
若狭地方では馴染みのある普通酒。
米粒の旨みを感じ、綺麗やなぁと思わせる後味。
若狭まはたの、じわっとくる旨みがすこぶるよく合うのだ。
お次は
御食国を代表するプライドフィッシュ(自慢の魚)である若狭ぐじ。
大好物。
◆若狭ぐじ 昆布〆
皮目を軽く炙っている。
舌の上でねっとり妖艶に芳しく、深い旨みを撒き散らす。
◆若狭ぐじ 天ぷら
そのグジ料理に合わせる酒は「大吟醸わかさ」
小浜産・山田錦(精米歩合38%)と、
仕込み水は蔵の前を流れる清流・南川の伏流水を使用。
しかも福井県が独自開発した「FK-801C」酵母を使い醸造という
米・水・酵母の全てが福井県産。
グジの天ぷら、この鱗の立ち方完璧!
ハフハフと頬張れば香ばしく、その身はとろけるようなテクスチャー。
グジの気品ある味わいや独特の旨みに
「大吟醸わかさ」の華やかな香りと透き通った甘みがスッとただよう。
そよ風が、心地よくすり抜けていくような。気持ちいい相性の良さ。
しかも・・・ここで「京ちゃんへしこ」が登場とは。笑
※「京ちゃんへしこ」とは…
私のオカンが年に2回漬ける鯖のへしこ。
塩辛さ皆無。噛み締めるほどに、
発酵由来の独特の旨みと“甘み”がじゅんわり滲み出る。
「大吟醸わかさ」の温度が少し上がるとともに
米本来の旨みに膨らみが生まれる。
へしこと最強タッグやこれは。
◆京あげと小松菜の炊いたん
煮汁の旨みに「上撰わかさ」おり酒の、質朴な味わいが合うのよ。
◆焼き原木椎茸
完全なる酒飲みの友。合わせる酒は……
◆三涌(みわく)
地元の名水“雲城水”(うんじょうすい)と
小浜産五百万石を使用。
これもまた話は逸れますが
私が小浜市内をジョギングするときに必ず立ち寄る名水スポットが
小浜漁港近くにある“雲城水”
自噴井戸から勢いよく地下水が湧き出ていて、
まろやかで軽やかで清らかな味わい。
ジョギング途中にいつもがぶ飲み。笑
さてその純米酒「三涌(みわく)」は
雲城水らしい、すっきりとした味わい。
飲んでいてふと感じるのは
「小浜ならではの“水”を味わう純米酒」であること。
アルコール度数がやや低めなのも嬉しいね。
椎茸の素朴〜な旨みが、寄り添ってくれた。
そして真打ち登場。
◆純米大吟醸「五芒星」
小浜・宮川産の山田錦100%
陰陽道の“ 旧暦” に着目し醸造した日本酒だ。
聞くところによると、「五芒星」は、安倍晴明を祖とする
天社土御門神道本庁(おおい町)が作成した暦(旧暦)を参考に酒造。
醸造開始日、酒母米の初蒸し日、初添え、仲添え留添え、上槽、火入れ、瓶詰めなど
醸造の全行程を暦上の吉日に行ったそうな。
まさに、日本酒界のビオディナミやな。
口に含めば、すっきりとした飲み口。
華やかさと、奥深い味わい、後口に広がる酸味、
それぞれがバランスよくハーモニーを奏でている。
静かなる興奮だわこれは。
「五芒星」に合わせる肴は、なんと
「カマンベール生ハム巻き天麩羅」(!)
「五芒星」をこよなく愛する小浜の名士・山本さん曰く
「この組み合わせが最高。だから是非一度試してほしい」。
ようやく念願のときが来た。
店主のヒデさんが言うには
なんの変哲もない生ハムとカマンベールだそう。
頬張ればカリリと香ばしく、ジュワリとチーズが溢れ出し
その油分と生ハムの旨みが混じり合う。
咀嚼をしながら飲み込まずして、「五芒星」を口に含みモグモグ。
すると、「五芒星」のフルーティーな香りが
チーズのコクをより引き出してくれる。
しかも酒がもつ適度な酸味と
生ハム&チーズの塩味が重なり合い、これはもうね新味発見。
しかもキレのある後味だから、余韻はスッキリ。
だから両者の無限ループに突入となるのだった。
熱く語ったら、このペアリングが恋しくなる。
もちろん、地物には地の酒!
「若狭イチジク」の天麩羅ほか地素材の肴ともに。
◆ひつまぶし
白焼き鰻の、さっとタレまぶしに
米は福井県産コシヒカリ。はぁもう目を細めてニンマリ無言だった。
本日の「小浜酒造」のお酒たち。
若狭小浜という地域だからこその酒づくりに感銘を受けた。
飲めばそれは歴然で。地域の風土、そのエピソードも交えて飲めば
なおさら味わいは膨らみを増す。
地物には地の酒。両者がグッと手を掴んで離さない感じ。最強だった。
山本さん、高岡さん、ヒデさん
ありがとうございました。
「和旬いわもと」
福井県小浜市駅前町4-30 KTビル1F
0770-52-6330(要予約)
「小浜酒造」