大阪・北堀江
「milpa」
装いも新たに、大々変革を遂げた。
シェフ・Willy Monroy(ウィリー・モンロイ)は
昨年春に開かれた「Noma Kyoto」のキッチンスタッフとして活躍。
(なんと自店を休業して。しかもNomaからきっりち給料をもらって)
2013に来日したウィリーの料理観は
国内外のトップシェフ、そしてお客さんとの交流のなかで
鍛えられ、築き上げられてきたのだろう。
その思いを、2024年9月にオープンした
メキシカン・ガストロノミーがテーマの「milpa」で具現する。
まずは見慣れぬ食材が並ぶ。
白・赤・ブルーのトウモロコシ、複数のチレ(唐辛子)、カカオなどを使う
メキシコの伝統をベースにしていること。さらには
日本の旬の魚菜、肉、などを用いてコース料理を組み立てること。
それらを詳しく説明してくださるのは、なんと、ケンさんこと長谷川 憲輔さん。
レストラン業界では知らない人はいないケンさんのエピソードは深い。
シンガポールの著名シェフ、アンドレ・チャンの目に留まり
シェフ・ソムリエとしてレストラン・アンドレの立ち上げに携わり
その後もシニアソムリエとして国内外で活躍されてきた方だ。
私はアルコール・ペアリングに。
「JEAN VESSELLE OEIL DE PERDRIX NV」
Pinot Noir100。優しさと繊細さを兼ね備えていて
気持ちの良いスターター。
◆BOCOL HUASTECO
FLAUTAS, CREMA AHUMADA
まずはフルートをイメージした料理、FLAUTAS(フラウタス)
白トウモロコシを用いた自家製トルティーヤの中には
トリッパ、ジャガイモのピュレ、燻製サワークリーム。
ザクッと食感強め、咀嚼するほどにトリッパの風味や
薪で燻製にしたサワークリームの香りが立ち上る。
ちなみに「milpa」には、タコス製造用マシンがある。
メキシコ在来種のトウモロコシを用い、
マサと呼ばれるトルティーヤの生地を作る。
既製品のそれと比べると、香りも味わいもレベル違い。
こちらはBOCOL HUASTECO(ボコル フアステコ)
青いとうもろこしで作った生地に
パルミジャーノ・レッジャーノとコリアンダーを練り込み、ラードで揚げている。
さらに、唐辛子のペースト入りマヨネーズや、
野菜のクレーム、トマトとワヒージョチレで煮込んだズワイガニなどが層をなす。
複雑な辛味や、コリアンダーの芳しさ、カニの濃厚な旨みが押し寄せた。
◆TOSTADA
CROQUETA
まずはCROQUETA(クロケッタ・小さな丸い揚げ物)から。
マッシュポテトをベースに、
ウニ、パラペーニョを組み合わせている。
揚げたて熱々、繊細な口溶けも印象的で、
海苔のパウダーが、海の香りを助長させていた。
TOSTADA(トスターダ)は、トルティーヤを揚げたもの。
milpaのそれは、青トウモロコシからつくられている。
具は、マグロの大トロ&アボカド。
生地はザクッと香ばしく、マグロの大トロ&アボカドの旨みが広がる。
後味にはライム系の酸味。
「BAETTIG VINO DE REGION CHARDONNAY 2023」
濃密な香り、溌剌としたミネラル感が、揚げ物に合うのです。
◆LECHE DE TIGRE
TLAYUDA DE CHILES
LECHE DE TIGRE(レチェ・デ・ティグレ)は“虎のミルク”を意味するソース。
セビーチェのマリネ液でもあるそうな。
昆布だしとベジブロス、ココナッツミルクをベースに、
イサキをこんもりもり、シトラスのグラニテを忍ばせている。
まろやかな味わいの中に、グラニテの酸味がキュッと響く。
TLAYUDA DE CHILES(トラユーダ・デ・チレ)
トラユーダは、メキシコ・オアハカ州の代表的な料理。
薄いトルティーヤのザクカリ感がよく、
ブラックオリーブやコリアンダー、
燻製にしたモリタ(チレ)を使ったマヨネーズとともに。
「SEBASTIEN RIFFAULT SANCERRE AKMENINE 2108」
アロマティックさと爽やかさを併せ持つ。
これ一本で通したくなるくらい、優秀。
◆TAMALES
ポルチーニのクリームソースの上には、薪焼きポルチーニと酢橘のゼスト。
メニュー名にあるTAMALES(タマル)とは
トウモロコシ(青)をすりつぶし、ラードと合わせてこねた生地(マサ)のこと。
バナナの葉で包み、蒸している。メキシコ的チマキやな。
ポルチーニはジューシーかつ香り高く、酢橘の香りがふうわり漂う。
バナナの葉とタマルという、伝統的な技と素朴な味わいが融合していた。
「DARIO PRINCIC BIANCO NV」
ジューシーなエキス感と軽やかさが両立。タマルの質朴な味わいが合う。
◆MOLE VERDE
MOLE VERDE(モレ・ヴェルデ)=緑のソースもメキシコの伝統。
かぼちゃの種、ほうれん草、ブロッコリー、コリアンダー、少しのチレを加えて
緑のソースとしている。
薪の熾火で調理した冬瓜の、ジューシー感と薪の香りが心地よく
モレ・ヴェルデのピュアでいて凝縮感のある味わいがマッチ。
「BARMES BUECHER GEWURZ 2022」と共に。
アルザス地方。品種はゲヴュルツトラミネール。
ライチを思わせるフルーティーさ。軽やかなタッチながらリッチな味わい。
◆EMMOLADA DUCK CONFIT
EMMOLADA(エンモラーダ)
白いトルティーヤの中に、
鴨肉コンフィ、バナナ、玉ねぎピクルスなどを包み込んだ
クレープのような仕立て。
漆黒のソースはMole Negro(モレ・ネグロ)と言い
5種の唐辛子、ドライフルーツ、カカオ、
ナッツ、シナモンほか25種の素材を使っている。
トルティーヤは甘やかな香りを放ち、鴨肉はホロホロ
噛むほどにバナナの甘さやピクルスの爽やかさが
時折、顔をのぞかせる。さらに。
モレ・ネグロのホロ苦さと深いコク、チレの爽やかな辛味…
ゴマの香ばしさ。複雑な味わいのハーモニーに、グッと心掴まれた。
ここに「どぶろく」ときた。
nondo どぶろく生酛無添加(岩手・遠野)
シュワッと軽やかで酸味もくっきり。
蔵付き酵母の野性味を感じつつ後味はエレガント。
ソースの深みのある味わいを上品に引き立てる。
ケンさんのペアリングの妙に唸ります。
◆SALSA MACHA
鹿児島の経産牛サーロインの薪火焼き。
滋賀「サカエヤ」より。
サルサは7種の唐辛子を軸に、粒マスタードやゴマ、
ピーナッツなどを組み合わせた、SALSA MACHA(サルサ・マチャ)。
さらに、トウモロコシのピュレ、艶やかな飴色玉ねぎと。
ここに、アルコールを…と思っていたんだけれど
あまりにも、ノンアルコール・ペアリングが魅力的すぎて
無理をお願いして変更させていただいた。
「TEJUINO」
テスグィノと呼ぶのかな?テフイノか。
トウモロコシを自家発酵させ、ライムのフレッシュな香りを加えている。
ほんのり甘やかな風味と、発酵特有の酸味を感じる。
ピュレのナチュラルな甘みと響き合う感じだった。
◆ARROZ A LA TUMBADA
ARROZ A LA TUMBADA(アロス・ア・ラ・トゥンバダ)とは
米と海鮮を用いたメキシコ伝統の味。
バレンシアのボンバ米を使い
薪火で調理した伊勢海老と共に。
コリアンダーが香り、甘酒を忍ばせたソース・オランデーズが
和でも洋でもない独特のコクをもたらす。
ラストも珍しくノンアルで。笑
TAMARINDO(タマリンド)を発酵させた品。
キュンとくる酸味と、エキス感がいいね。
お腹もいい感じだけれど、アロスを次の一口へと進ませる味。
自家製レモネード、コンブチャから、メキシコのローカルな発酵飲料に至るまで
「milpa」はノンアルコール・ペアリングも一歩先をゆく。
◆JACKSON FRUIT
ジャクソン・フルーツのソルベとピュレが層をなす。
さらにはホイップクリームとピーナッツバター、果肉。
爽やかでほろりとした苦味もあり、異なる温度感も良い。
◆CHURROS
チョコレートのチュロス。そうWillyがつくる揚げたてチュロスは秀逸。
薪の熾火で燻したかぼちゃの種は芳しく
生地は香ばしくも、ゆるゆるの口溶け。チョコレートのクリームが溢れ出た。
コーヒーと共に、興奮気味の心をクールダウン。
心地よい緊張感に包まれた、素敵な夜でした。
ご一緒させていただいたお二方、
そして「milpa」の皆さん、ありがとうございました。
メキシコならではの食材と伝統的な技をもち、
日本ならではの素材を巧みに組み合わせ、オリジナリティ溢れる革新的な皿へと。
あらゆる可能性を感じた夜。これからが楽しみな一軒です。
「milpa」
大阪市西区北堀江1-16-25 YSSビル1F