祇園「ユキフラン佐藤」
店先に目立った看板はなく、
名刺みたいなカードが貼り付けられているだけ。笑
仕事の話になるけれど
「あまから手帖」2024年12月号は、40周年記念号です!
特集「和食が食べたい」
約3年ぶりとなる和食特集。
「10年通いたい和食店を書いてください」と
編集者Aからオファーをいただき、エッセイを書きました。
ぜひご覧ください。
その和食店とは、
本日のヘベレケ日記に登場する
「ユキフラン佐藤」
気心知れた皆さんと共に、おいしい楽しい夜。
(毎度のことながらヘベレケ日記=プライベートの自腹飯です)
始まりがこのシャンパーニュは嬉しいな。その後、泡3杯。
「お待たせしました、スープ・ロワイヤルです」と主人・佐藤功一。
ハタのアラと一番だしからなる蒸しスープ。
どこまでも清らかで深い味わいだ。
何口かはこのスープだけをすすり、その滋味に溺れる。
ロワイヤルはふるふる繊細で、忍ばせた香茸が名脇役。
だしが混じり合うと、深みを帯びる。
豆皿には、朝鮮人参の髭根の素揚げ。
かじりながら、滋味深いスープをすする。この苦味がまた合うの。
そして時間差でやってきた「小芋」に感銘。
頬張れば、滑らかなテクスチャー、冬の香りを撒き散らす。
「小芋を添えようかやめようか、6時間悩みました」と佐藤さん。
凡人ならサラリとこなしてしまうけれど
苦悩する奇才・佐藤さんは、違う。
◆鯖寿司
シャリには塩揉みの春菊を合わせていて、その按配よろしく
締めすぎない〆鯖といい具合に調和。
いやしかし、ロワイヤルを食べ終えたあたりで
「今、〆鯖の骨抜き?」という驚きも佐藤さんらしい。
できるだけ作りたてを徹底したいのだ。
具を包みたて、
揚げたて熱々の春巻きを手渡し!
◆ハリイカの新子 菊芋 菊花 春巻き
新子はシャクッ、菊芋ホクホク。さらに
口の中には、春巻きの香ばしさと共に
椀物をいただいているような清らかな旨みが広がった。
アメージング。
◆白甘鯛 造り
古伊万里の軍配の皿で
2日寝かせたという白甘鯛は、シャクッとねっとりの間をゆく。
じわり広がる旨みと、白梅酢の塩梅と香りというハーモニー。
アルザスのビオディナミ・リースリング100
「Happy Lemon Vignobles des 3 Terres」
華やかすぎず、レモンに通ずる爽やかさ。重たさもなく料理に寄り添ってくれる。
佐藤さん、椀種を作っている最中。
その待ち時間も、彼の所作をガン見しながら
皆さんとの会話も盛り上がり、じつにエキサイティングなのです。
◆煮物椀
白味噌のやんわりとした甘みと旨みがDNAに響く。
椀種は、牡蠣と舞茸のひろうす。
あえて焼きの香ばしさをつけた舞茸に、牡蠣のエキス感が重なり合う。
秋田の伝統野菜「三関セリ」の鮮やかな食感と香りがいい仕事をしてました。
◆ほっき貝 梨と水菜と干瓢のおひたし
まず、ほっき貝を。
完熟酢橘のまぁるい酸味が、軽く火を入れた貝の甘みをぐいっと持ち上げる。
おひたしにも唸ったー。
だしの旨みを蓄えた干瓢、梨の清々しい味わい、水菜の食感が主張。
「ほっき貝と、おひたしを交互に食べてください」と。
すると、両方がない味覚を補い合い、新たな味わいが生まれるだ。
その発想はどこから!?の質問攻め。
葡萄を?炭火焼!?みたいな光景も繰り広げられていた。
「肉と栗です」
潔い説明だ。
まず「肉」をつまみ、「栗」は鬼皮を剥き渋皮ごと頬張り
何回か咀嚼したなら、後追いで「完熟実山椒」を一粒かじり…。
肉のしっかりとした味、栗の質朴さ、実山椒のアクセントが
口の中で見事すぎる調和を奏でる。
次は、「肉」と炭火で炙った「葡萄」を。
この温い葡萄が、ピュアなソースと化し、肉の濃厚な旨みが和らぎ
さらにもう一口、と箸を進ませるのです。
意図のある組み合わせと
意味のある味の重なり合い。勉強になるし感動的だった。
(尾形乾山 作 四方皿にて(江戸時代中期))
◆静紫 間引き菜とシャコのおひたし
ゴマの香ばしさ鮮烈!
シャコは甘く、静紫は食感心地よく。
清らかな味わいのおひたし。
赤木明登さん作の漆器で
「セコガニ雑炊」
あえて最後に雑炊でセコガニ、という安堵。
佐藤さんらしい。
しかも、フレッシュなセロリと、醤油漬けセロリの合わせ技。
セロリは芳しく、セコガニの濃ゆい甘みだけが浮かび上がる。
唐辛子オイルの香りのハーモニーも美しかった。
◆柿の果肉のシャーベットとジン
濃密。妖艶。魅惑的フィナーレでした。
意図のある意外な組み合わせがあり、驚きあり安堵あり。
全ての料理の記憶がはっきりあるし、時が経とうとも忘れられない。
それが佐藤功一という料理人のクリエーションなのだ。
「ユキフラン佐藤」
京都市東山区祇園町北側新橋通花見小路東入ル南側2軒目八百平ビル1F奥
075-531-3778(完全予約制)