カナダ渡航の前日。
伺ったのは大阪・最北端 能勢町にある
「能勢 日本料理 新(あらた)」
窓の外には能勢らしい、のどかな田園風景。
私たち以外のゲストは地元の年配客。
地域の方たちに愛されているなぁという印象と、
穏やかな空気がなんとも心地よい。
席に着くなり驚いた。
私のDNAに響くこの景色。
「え?もしかして若狭塗箸ですか?」ってマダムに尋ねるとビンゴ。
はい、箸屋(若狭塗箸)の娘です。笑
店主の中井 健(たける)さんは、
京料理の修業を筆頭に、ブリュッセル(ベルギー)では
EU欧州連合本部 日本政府代表部の公邸料理長として4年腕を振るわれた料理人。
だからだろう。
日本料理の技としっかり軸に据えながら、
その枠にとらわれない独特の感性、そしてテクニックに驚いた。
能勢の夏野菜
キュウリとキウイとミントのジュース
二十四節気では立秋ながら、猛暑がすぎる日だった。
夏の香りとミントの爽やかさが清々しく広がりクールダウン。
運転手だったので、お供は能勢炭酸水。
ツキノワグマのリエット
山羊ミルクのチーズ
チュイルは香ばしく、リエットはクリアな風味を放つ。
チーズのピュアな味わい、河内晩柑の塩漬け(2年)の風味のハーモニー。
能勢 とうもろこし
何も足さない、何も引かないその味づくりに驚いた。
とうもろこし(コールドプレス)の豆腐、
ねっとりとした滑らかさと質朴な風味にビビる。
コーンの特性(澱粉)を活かし、何も加えていないという。
そこに、マスカルポーネのなめらかな豆腐、だしのジュレ
山で獲ってきた木の実やバジルなどからなるかき氷の、清新な余韻。
能勢の野菜
炭火で炙ったズッキーニ、トマトとそのコンソメのゼリー、
川西の桃は白ワイン煮で。さらにオクラ、ささげ豆ほか
一口味わうごとに、それぞれの野菜の個性が漲る。
地鶏レバーと自家製ベーコンの松風仕立ても味わい深い。
椀物
「え?ラビオリ!?」これまた驚いた。
「天然のすっぽんでだしをひき、身はしんじょに。
猪名川の蕎麦粉のラビオリに仕立てました」と中井さん。
口に含めば、どこまでも深遠な味わいが広がり
徐々にすっぽんのたくましい旨みが広がる。
じゅわりとほどける冬瓜の安堵。至福以外の何者でもない。
能勢のマグロ
「え?能勢、海ないんですけど……」
「赤い一切れを味わってください」といったやりとりにワクワク。
口に含むと、ねっとり感は、漬けマグロを思わせる。
だけどナニ・・・!?って驚いたその正体は……とある旬の果実でした(驚)
パプリカの糠漬けやツルムラサキ、能勢の落花生、胡瓜の雷干し‥と
能勢の地物が舌を喜ばせる。
鰹たたき 赤紫蘇ジュレ にんにくの花
窓の外で、藁焼きをするところをガン見。その鰹は
同系色の組み合わせ。頬張ればすっきりとした旨味と、
ジュレの清々しい風味がハーモナイズ。
能勢 賀茂茄子 利休焼き
賀茂茄子は肉厚マッチョ。そこに
味噌のコク、金ごまの香ばしさが迸る。
そこに銀杏、ホッとする味わい。
鮎 三段焼き
中井さんいわく「頭は唐揚げ、腹は焼物、尻尾は干物のように」。
頭はザクッと香ばしくジュワッ、お腹はホクホク苦甘い。
尻尾は噛むほどにじゅんわり旨み。
地元の胡瓜を用いたみどり酢と共に。
添えられた素麺南瓜で後味さっぱり。
万願寺とうがらしのご飯
旬の香りが米ひと粒ひと粒に絡む。ほっこり落ち着くわ。
自家製の山椒味噌とともに。
漬物も汁物もしみじみ、丁寧に作られた味わい。
川西 いちじく オーブン焼き スペキュロスのアイス
スペキュロスとはベルギーや北フランスで馴染みのある
シナモンやナツメグなどスパイスが入るビスケット。
ベルギーで長年、料理人として生きてきた中井さんらしい!
いちじくの初々しい甘み、スペキュロスのスパイス感、
さらには温度差も心地よかった。
以上、日本料理の技に忠実に。
海外での経験もある店主・中井さんらしい発想や技をもち、
能勢という風土をしっかりと感じられる
驚きも楽しいコースに仕上がっていた。
ここ能勢町は、人口減少や高齢化といった課題もあるだろう。
だけど、この地域には何にも代えがたい自然と食材がある。
その可能性を信じ、料理へと昇華させる中井さんの挑戦は、
まさに地域の未来を紡ぐ営み。
先日お目にかかった、アラン・デュカス氏はこう仰っていた
「地方でレストランを営むこととは。
信頼できる作り手と共に歩むことで生まれる豊かさが、
やがて次の世代を育て、地域全体の力となる」
その循環を「能勢 日本料理 新」中井 健さんは体現していた。
「能勢 日本料理 新」
大阪府豊能郡能勢町山辺1136
072-703-9747