京都・御所南に、
静かに、確かな気配を放つ一軒が誕生した。
日本料理「かはづ」
凛とした外観。暖簾をくぐると、空気がすっと変わる。
ご主人の土田勇士さんは、岐阜・飛騨高山出身、35歳。
辻調理師専門学校卒業後、京都の名門「未在」で14年。
さらに桂の「隆兵そば」にて蕎麦の修業を重ね、
2026年1月13日、満を持して独立を果たした。
檜の一枚板カウンター。
数寄屋建築の美意識を宿しながら、現代的な快適さも備えた設え。
苔むす庭が、過度な演出なく、静けさを深めている。
■牛蒡すり流し 慈姑餅
ほんのりと立ちのぼる牛蒡の香り。
慈姑餅のほこほことした質感が、滋味をふくらませる。
派手さはないが、身体の奥に静かに沁みる一献目。
六腑が、あたたまる。
■先付
伊勢海老 土佐酢のジュレ
伊勢海老のほぐし身に、
なます(大根・金時人参)、柚子、チシャトウ。
土佐酢のジュレが全体をまとめる。
なますの軽快な食感、
伊勢海老のしぶとい旨み、
甘酢のやさしいキレ。
輪郭がはっきりしていながら、余韻は柔らかい。
■白真弓 純米無調整 生 直汲み 無濾過
(蒲酒造場/岐阜・飛騨古川)
土田さんの地元、飛騨の酒。
フレッシュなアタックから、奥行きあるコクへ。
最後は爽やかな酸が、きれいに引いていく。
■向付
北海道 マツカワカレイ
三重 アオリイカ
マツカワカレイは、じっとりとした旨み。
チリ酢を添えることで、味が前に出る。
アオリイカは、ねっとりと濃密な甘みを蓄えていて。
長芋の昆布締めなど、細部の仕事が冴える。
お次は「アジ」。
軽く〆た身に、ジュッと炭を当てて。
炭火の芳しさと、脂の甘み、
〆の加減の“やらこさ”。
針葱、うるい、タネツケバナ。大地の息吹を感じる。
■椀物
車海老しんじょう
だしは塩味ぎりぎり。
だからこそ、海老の存在感が際立つ。
■焼物
飛騨牛 ランプ
野草、九条ネギ、香茸のソース
まずは何もつけずに。
赤身はしっとり、雑味のない無垢な味わい。
そこに香茸のソースを添えると、
森の気配が、ふっと重なる。
合わせたのはジュラの赤。
Arbois Trousseau L’Abbaye / Frédéric Lornet
ラズベリーのチャーミングさと、エレガントな酸。
繊細なタンニンが、赤身の輪郭をきれいに縁取る。
この組み合わせ、好きだなあ。
■そば寿司
芳しい海苔、歯切れの良さ。
辛汁で和えた蕎麦は艶やかで、香り高い。
日本料理と蕎麦、
二つの修業が、ここで一つになる。
■八寸
見ているだけで杯が進む。
甘海老の味噌と柚子胡椒、菊菜のおひたし、
岩もずく 茶ぶりなまこ。
自家製のからすみは大根で留めて、愛らしく。
あん肝、真珠貝(アコヤガイ)のおかき揚げ。
和田ごぼうのたたき、柚子なめこ。
昔ながらの手仕事
その熱量に、こちらの胸が熱くなる。
とどのつまり、呑ませる、とはこういうこと。笑
■強肴
海老芋とにしん 炊合せ
実直で、端正。
海老芋はねっとりしすぎず、ほっくり。
にしんのエッジが、滋味を引き締める。
派手な感動の対極にある
「ちゃんと美味しい」という、静かな納得。
■食事
銀の朏(みかづき) 漬物
岐阜・飛騨育ちの特別栽培米。
浸水6時間。
粒は大きく、艶やかで、清らかな甘み。
DNAに響く、とはこういう米。
汁物は、お母様手製の味噌で。
そのエピソードに、心がほぐれジンとくる。
ご飯のおかわりは、
海苔佃煮、ちりめん、卵かけ、削り節……
カウンター越しのやり取りも、また楽しいのです。
■水物
べにほっぺ
金時人参のシャーベット
いちごは、香りが違う。
運ばれてきただけで、幸福感。
金時人参のシャーベットは、驚くほど“金時人参”。
忍ばせた甘酒ゼリーが、やさしく寄り添う。
■菓子・茶
薯蕷饅頭。
蒸したて、ほこほこ。
白餡主体の柚子あんが、冬の温もりを広げる。
土田さん自ら点ててくださる一服。
女将さんとの二人三脚に、ふっと心がほどけた。
「かはづ」とは、
「井の中の蛙、大海を知らず、されど空の青さを知る」
その言葉に由来するという。
蛙は古語で「かはづ」。
自分の見ている世界は、まだ小さい。
それでも、自分にしか見えない景色があると信じて。
そんな土田さんのお人柄に惚れたし、
女将さんやスタッフとのチーム力も素晴らしい。
名店で培った日本料理の精神。
蕎麦の修業で身につけた技、
そして、故郷・飛騨高山の食文化。
彼のこれまでの軌跡が、
一皿一皿に、静かに、しかし確かに映っている。
これからが、楽しみな一軒です。
「かはづ」
京都市中京区絹屋町121-1
075-708-3745
18:00〜一斉スタート
水曜休
おまかせコース¥25,000