京都・岡崎「京、静華」
いつもの皆さんと一緒に、
店主・宮本静夫さんのもとへ。
「京、静華」は
2026年5月からしばらく
店舗メンテナンスと、研修のため休業されると聞き、
これはもう、ラスト駆け込みしかないでしょうと。
まずはビールで喉を潤し、心も整えてスタンバイ。
■春巻 蕗のとう カチョカバッロ ホタルイカ
季節は春。ということで
揚げたての春巻きが登場。
ひと口目、蕗のとうのほろ苦い香りがふわり。
続いて、カチョカバッロのミルキーなコクがとろりと広がり、
さらにホタルイカのやさしい旨みがそっと重なる。
ひと口ごとに素材の個性が順に立ち上がり、
やがてひとつの春の景色になる。
■香爆鮮貝 北寄貝
ホッキ貝の香り炒めも見事だった。
澄んだ旨みが口いっぱいに駆け巡り、
グリーンアスパラガスの鮮烈な食感と香りに思わずハッとする。
仕上げの黒トリュフが、
名残りの季節と走りの季節を優雅につないでいた。
目の前で包丁が入る七谷鴨には、思わず視線が釘付け。
■春餅 七谷鴨
パリッと香ばしい皮、甜麺醤のほのかな甘み、白ネギの香り。
薄皮で包んで頬張ると、食感のコントラストまで心地よく、
静かな感動が広がる。
■金橘肉 サドルバック豚
鼻先に寄せた瞬間、金橘の香りがふうわり。
まずは豚だけをひと口。
なんて澄んだ味わいなのだろう、と心がほどける。
次に金橘を重ねると、ほどよい甘酸っぱさと肉の深い旨みが見事に共鳴。
この潔く、美しい味わいに、ただただ目を細めるばかりだった。
「Sancerre 2024 Comte Lafond」で通すことに。
口当たりはまろやか。キレのある酸味、柑橘系の主張が、
宮本さんのお料理に合うんです。
■静華魚生 明石鯛
明石の中華風刺身。
レモンとオリーブオイルのドレッシングとまとわせ、
中国の「捞起 ※1」に倣い、混ぜ合わせて味わう。
じっとりと旨みを放つ鯛に、ナッツの軽やかな食感、鮮烈な酸味。
豊かに広がったかと思えば、後味は驚くほどスパッと切れる。
春のはじまりのような、清々しいひと皿。
※1「捞起」ローヘイ:
皆で箸で高く「魚生」を高く持ち上げ、混ぜ合わせること。
掛け声をかけながら持ち上げる、験担ぎ的な儀式。
■清湯鮮筍 塚原筍 絹傘茸
澄みきった清湯のスープは、一口で思わず目を閉じた。
どこまでも深く、それでいて透明。
塚原の筍は春そのものの香りを放つ。
絹傘茸には海老のすり身が忍ばせてあり、
味わいにやさしいふくらみを与えていた。
■香烤牛肉 近江牛サーロイン
香烤(シャンカオ)とは、香ばしく、直火で焼くこと。
きめ細かな肉質に、上品な脂の甘みがじわり。
甜麺醤と豆豉のコクが重なり、馬告(マーガオ)の爽やかな香りが後を追う。
この香りの抜け方が、なんとも見事。
■春菜双色 本日の野菜
白アスパラガスと大原のこぶ高菜も印象的だった。
素材そのものの輪郭がくっきりと立つ火入れ。
そこに自家製カラスミが寄り添い、アスパラのエキスも、
高菜のほのかな甘みも、より一層際立っていた。
■清蒸鮮魚 明石黒メバル
春を告げる黒メバルは、蒸しのひと皿で。
醤油だれと身の旨みが渾然一体となり、
濃厚な味わいに白葱と香菜の香りが上品に寄り添う。
しみじみと、春の滋味。
この後は「麺或飯」
好きなだけ、という嬉しい誘惑。
まずは「肉包子」を半分こ。
具と生地の密着感が見事で、優しく、深く、ほっとする味。
この安堵感がたまらない。
■蕃茄湯麺
浜松のアメーラトマトを使ったスープ。
これがもう、孤高の一杯。
甘みと酸味の輪郭がくっきりと立ち、自家製の卵麺と見事に寄り添う。
ちなみにアメーラとは「甘いやろ!」の遠州弁だと知り、
思わずアンビリーバボー。
■麻婆豆腐飯
別腹、完全に作動。
自家製辣油の香り高さにまずうっとり。
「平野屋」の豆腐は、ふるふると繊細で、どこまでもやわらかい。
そこへ牛肉の旨みと鮮烈な辛味が重なり、幸福感は最高潮。
充足感、この上なし。
締めは甜品二道
刺激的な余韻のあとにいただく杏仁豆腐の、この緩急たるや。
清らかで、なめらかで、杏仁の香りがやさしく沁みわたる。
もちろん、おかわり。
鮮果茶をいただきながら、
宮本さんやスタッフの皆さまとの会話もまた楽しいエピローグ。
一皿ごとに唸り、真剣に向き合い、また唸り、堪能する。
何よりも、この時間そのものが豊かだった。
宮本さんは、しばしの充電期間へ。
中国での新たな武者修行を経て帰ってこられるのでしょう。
さらに、お弟子さんお二人の独立の話にも胸が高鳴る。
(中国料理ではなく。和食、そしてフレンチとは)
彼らの新店舗を必ず訪ねること、
そして秋頃「京、静華」での再開を心に誓い、
名残惜しく店を後にした夜でした。
「京、静華」
京都市左京区岡崎円勝寺36-3 2F
☎075-752-8521