いつメンの皆さんにお誘いいただき
「cenci」夏の夜。
アイスハーブティーでクールダウンの後
シャンパーニュ「RÉMI LEROY EXTRA BRUT」で幕開け。
続くワインは
マネージャー兼ソムリエの文屋隆志さんに全任せのペアリング。
◆烏賊 雲丹 ガスパチョ
イカスミと米粉のチップの上には、ぷっくり肥えた雲丹。
忍ばせているのは卵黄や烏賊ワタ、アンチョビからなるソース、
細かく刻んだ発酵青マンゴーと炙り烏賊と共に。
台湾の香辛料・マーガオのレモングラスのような爽やかさが
夏なんです。
「ガスパチョ」といっても坂本シェフらしさ炸裂。
夏野菜を発酵させたダシと、鳥取「井尻農園」のミディトマトを組み合わせ、
焼き茄子やディル、レモンの搾り汁、オリーブオイルを合わせている。
野菜たちは夏の香りを撒き散らしながら、
乳酸発酵特有の、まぁるい酸味の余韻が堪らんかった。
◆ペルシュウ
「BON DA BON」多田さんがつくるペルシュウは、24ヶ月熟成。
どこまでも甘く、舌の上でスッと口どけると、旨みはじっくり深く。
京都「田鶴農園」インカのめざめ10ヶ月熟成は、蒸して素揚げに。
「吉田牧場」のリコッタチーズの爽やかさが、
芋の素朴な香り、優しい甘みを引き立てる。
ドイツ「Makalié Chardonnay 2020」
乳酸発酵のニュアンスが、ペルシュウの熟成香にピタリ。
さらには樽熟成の香りが、質朴な香りのジャガイモと響き合う。
◆とうもろこし ズッキーニ 甘海老 パクチー
甘海老は、オキアミの塩漬けでマリネ。
愛知のゴールドラッシュは、蒸しとピュレとクルトン3種の調理法で。
夏野菜にはパインのビネガーや、柚子塩麹のビネガーが絡み
沖縄のピパーチやコリアンダーの鮮烈な香りがいいね!
様々な熟成香と、コーンのピュアな甘み、食感の差異も楽しく
なんとも爽やかな後味。
夏のさまざまな記憶を呼び起こしてくれる、クリエーションに脱帽!
「Windchaser Gewurztraminer 2019」の
ライチを彷彿させる清々しさが、とうもろこしの皿には似合う。
目の前には鮎の骨せんべい。パリポリ楽しく
◆新生姜 キャベツ 胡瓜 鮎 ライム
自家製の全粒粉タヤリンを使った冷製の一皿。
麺はライム果汁と昆布だしで和えていて、
鮎魚醤と麹のソースが、絶妙な按配を奏でる。
炭火で焼いた鮎のほろりとした苦味が全体を引き締め、
胡瓜のピクルスや新生姜、
乳酸発酵させた松浪キャベツ芯のまろやかな酸味が
絶妙にいい仕事をしていたし、
マイクロエゴマやライムの皮、パラペーニョの香りに異国へトリップ。
オーストリア「Liszt Individualiszt 2020」の
(ソーヴィニヨンブラン、ヴェルシュリースリング)
すっきりしつつ、きゅっとくる酸やほのかな苦味が
鮎の苦味や、発酵の丸い酸味とハーモナイズ。
滋賀「大地堂」のディンケル小麦を使ったロデヴは
「café kocsi」の2号店、「Année」メイド。
始まりのフォカッチャも、ロデヴも、料理に寄り添い、かつ味わい深い。
次の料理は、目の前で…
鶏ダシと穴子のダシ、「とおの屋 要」のどぶろく酢と
レモングラスからなるダシを注ぎ入れて。
◆トマト オクラ 穴子 クミン レモングラス ワカタイ
炭火焼きの伝助穴子はふっくら感この上なく、
ダシの滋味深い旨みと丸い酸味に、レモングラスが心地よく香る。
サフランとクミンで炊いた黒米と丸麦の香り、さらに
ペルーやエクアドルなどの南米料理には欠かせないハーブ「ワカタイ」の
甘やかな香りが、追いかけてくる。
また、煮物椀の椀種のようなトマトの存在が絶妙。
だしにトマトのやらこい酸味がじわじわと滲み出る、味の変化も楽しいのだ。
お口直しのアチャールは、
まくわうり、ヨーグルトソース、愛媛の河内晩柑、ブラッククミン。
「先インド、ムンバイのレストラン「noon」のシェフとコラボして
インスピレーションを受けました」と坂本シェフ。
インドのエッセンスを感じさせながらも、行きすぎてない加減が秀逸だった。
「Dario Princic Sivi」
スパイスの香りとの相性がすこぶる良い、ピノグリージョ。
◆上賀茂唐辛子 賀茂茄子 フェンネル ピスタチオ 酢橘
ヴィーガンな一皿。
唐辛子と茄子は揚げ浸しにしていて、
大豆からひいた精進だしと、そら豆醤油で味を調えている。
さらに、フェンネルとその実、ピスタチオと塩麹のソースを絡めて
フィンガーライムの果肉と一緒に。
とろりとした茄子の旨みが舌を喜ばせるし
大葉のオイルや枝豆ピュレの香りに、感覚が研ぎ澄まされてゆく。
しっかし食べ応えのある一品。
最近、急逝したチェコの巨匠の
「Kambrium Cuvèe 2019 Dobra Venice」を。
爽やかさと複雑味をあわせもつ。
◆アスパラ 大豆 麦 経産牛 黒にんにく
「サカエヤ」で手当をした経産牛は、
うるうる艶っぽく、この幸せをずっと噛みしめ続けていたい。
北海道のアスパラガスには古代チーズ「蘇」が添えられ
お肉に負けない健やかさ。
ホタテの麹ソース、黒ニンニクと玄米小麦のソース
炒り玉ネギののソースと共に。
「N°3 2004 BRESSAN」
18年樽熟成、唸りますわこれは。
お口直しは、スイカとブラッドオレンジのグラニテ。
ジン、レモンビネガー、乳酸発酵させたミックスベリーという、清新な味。
◆つるむらさき 牡蠣 檸檬 フェットチーネ
仙鳳趾の牡蠣のエキス、無農薬レモンの爽やかさが
フェットチーネに絡む。このホッとさせる味わいに皆、ニンマリ。
チェコ「Chardonnay 2017 Jaroslav Osicka」の
蜂蜜っぽさやくっきりとした酸が、レモンのニュアンスと実に合う。
そしてドルチェへと続きます。
◆放牧牛乳 桃 フレッシュ
桃はコンポート、ソルベ、スープにて。
吉田牧場のフレッシュチーズのエスプーマと、爽やかな今を奏でる。
ハスカップのコンブチャスープと共に。
◆アマゾンカカオ バナナ マンゴー パッションフルーツ
バナナジェラートの下には、
アマゾンカカオ入りの半生チョコケーキ。
カカオニブとクランブル、マカンボ(カカオの仲間)のキャラメリゼに
カカオのチュイル…と、中南米のカルチャーが香る。
沖縄のマンゴーはとんろり、
パッションフルーツのスパッとキレのある酸味も良かった。
そして、食後のお茶でホッと一息。
コース前半〜半ばにかけては、
国境を軽く越えながら、坂本シェフの今を感じさせる、夏と独創性。
肉やパスタは、どこまでもシンプルに、深く、研ぎ澄まして。
この緩急が、食べ手を魅了するのです。
坂本シェフ、みなさん、いつもありがとうございます。
「cenci -チェンチ-」
京都市左京区聖護院円頓美町44-7
☎075-708-5307
open : 12:00〜12:30入店、18:00〜19:00入店
close: 月・火曜、日曜不定休